<729>「音になる人」

 わけも分からずぼろぼろな姿で現れ、突然帰されたり、急に招かれることになる人々のあいだで一切の汗を流していた。どちらを踏むか、私が得るか、何を? 特に、渡しがたいものを。選んでいる、そのそばから暴れたい奴は暴れ出すものを。

 ようし、そうすれば私は音になる。不都合とともにデカデカと鳴る。鳴ったら鳴ったで、ふるえて、的確な逃走を用意しよう。お前は走る、そしたら、あの見えなくなった、細さを近くで受け止めるだろう。

 離れない、離れない、ならば、あどけなさだけを使って。ふざけて、溢れないだけの長さ、窓の外には、いらついた星が見える。見えたところで、呼吸はいつも静かである。誰かが出てくるとただその深さをはかっていた・・・。