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 ひとつの通りを、声のまま渡って行って、適当なところへ落ち着くと、もう元へは戻れない。いやしかし、こうしてまた同じところへきているのではないか。それはそうだ。しかし、戻ったのではない。どこかで見たことがある。見たことがあることすら、新しさを歓迎してゆく。一体全体、お前の声はどこから出ているんだ。それは、思いもかけない場所、急に編み出された休むためのところから、ほのかに漂い出ていた。ならば、出来るだけいろいろな場面で鳴ろう。きこえなくても困らない。ただ、ありそうな高さが通った記憶を、あちこちで生み出してくれたら。

 容易に思い出せるところから随分と沈んできたもので、何に関係して浮上するのかも、もう分からなくなっているところ。そこへ、およそあけひろげな高さが響く。人によっちゃあ跳ね起きた。無神経はこれからの声に絡まるのか。無関心な波がひとり寝そべった頭に寄り、飲み込むのか。何通りもの名前を用意して、次々に流してゆくのを見たとき・・・。