<788>「空き缶のなかで増殖する、私の楽しさ」

 かけがえのない別れが私に何事かの言葉を残していく。

  良かったね

  また帰ろう

 あるいはそこで埋もれていく。誰に対してもよみがえる。

  あざやかさ

  集まれた

 昔、一すみの心でインチキだと考えていた、今も同じ気持ちで、ただ、私は、ひとりでインチキを太くすることが出来た。

 めまぐるしい。私には別れがなかった。あるいはそう言い切った。雲が行動範囲をハカっていた。眩しさに優先的に飛び込んでいく。目の前で空缶が転がる。説明出来ない速さで増えていた。何が。私のなかでどうしようもない楽しさが。

 しかし、永遠に帰らないつもりでいる。迎えにいっては諦め、迎えにいってはまろび、足元に対して何ら拘りのないとき、いとも簡単に踏みしめていた。想像するよりも早く緑色の世界が現実になっていた。

 傾いて駆けているさま、あんぐりと口をアけ、僅かに挟まる。そうか、この道には見覚えがあるぞ。しかし、決して意識には似ていない。それは、足の形。掻き回される指の匂いとともに、記憶に貼りついてはがれない。まず、衝撃とは無縁で、柔らかく触れ、それはのちの地面になる。同級生が声をかけている。揺らぎがかすかに眩しさを作ってみせる。