<814>「雨期の泥と片目」

 私の頭を割って、ここへぬめり出てくれ。ここはおそらく質的変化の、突然の煮くずれ、の塊。

 人が試しに駆け込むところ。

 ボーッとしたのそれぞれで、頭は増えて。

 まさか、あなたが陶然と、またこの頃と言うときの。

 雨期に、あなたは表情を合わせる。

 あなたは雨を降っている。

 たくましい地面を、その土くれに触れていつもの音、を、消す、こうしてあなたは雨期 あなたは塊たい。

 音ずれる機会を見つめる。その瞳のひとつひとつの砂。砂は方向を湿さなければならない。例えば泥田。

 泥田ん坊 泥田ン坊

 臆病にも私。私からは片方の目。

 限りなくぬめ、ぬ、ぬめり込んでゆくと、ここから、緑、としか言えない毛、の毛。

 あたしは泥のなかに生えている。

 泥は表皮であり、内臓でもある。

 ここでぬめりを割ってくれ。遠くから人の集まる。

 おそらくは雨期。雨期は瞳のなかにひからびた叫びを置いておく。ぞくぞくと置いておく。

 環状の語りが私の背すジを捉える。つらまえたあとの響きに突然転んでみる。私の声は出ない。

 あたしは数珠を誘った。数珠のあやしい微笑み。

 ひとりで、まあ、ひとりで立ち尽くすにしては、場所は愉快過ぎる。おそらくはひどく、むろん愉快にすす、水を、す、水をすする、と、そのときの片方の、目、だけで誘う。

 もう一方は

 片側の目はどうした。それは泥だんご。

 泥だんごは、雨期を呑んでしまった。

 泥田ん坊 泥田ン坊

 そこから、明らか、な、私、の生える・・・。