<855>「膜のなかの勢い」

 彼ら、そして、疑いなく、晴れる。

 静かな、おそらくは底、一番深いところの、燃焼性呼吸。上下、沈潜、浮(フ)、浮(フ)、やがて管(くだ)、のなかに勢い。

 私のな、みだ、(裸‐ラ)、言(こと)は、突然の誘い、いやおそらく、冷静な表皮。表皮をして、人(ひと)、美、と、移り気な声はやがて旋回し、ごうごうと音を立て、その澄み切った、小さな箱(はこ・・・)、目掛け、テ・・・くだる、くだってゆく。

 曖昧な音声に、ア、さての方向へ、素早い振り向きを必要とするのゥ・・・それから断片の、無邪気な表情。困惑‐ド‐同時に、真剣さを示す、あるところで、瞳の色・・・。

 私は、このあいだ薄い外層の驚くほど静かな窓に、耳をピッタリと寄せている。おそらく何も見えていない(層であらねばならない・・・)。おそらくはそこに、映像とも呼べない視覚的な興奮の渦が流れ、場所柄、そして配置の如何などをまるで無視し、ゴボゴボと、溺れにも似た音を立てて潜ってゆく・・・。

 瞳はこのためにこそ球状であることを求められていた。私が始まりをその場で回転させ、終わりをもまたその場で次々に踊らせ少しずつズラしていくよう・・・。意図した声(こえ)の次々に温度の増し、煙になって見えなくなってしまう、ノ、誰かの呼吸。

 オブラートのなかでひどく汗をかいているように見える人。スローモーの技法を、歯を噛みしめ、確かめている人。いずれの‐び、薄い膜になって平静を体現する時間。それらは無言の熱と、無言の生え変わりを意味する・・・。

 時折猛スピードで呼吸があらゆる時間を通過する・・・。