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 こう、こう、こう。と、巡り、声は打つ、声は打つ。

 ひくり返り、午後のなかへ見事に歩いてゆく。その手前、ひらけた音(おと)、ひらけた言葉。

 午後は二度、目を開いた。例えばわたしは静かにしていた。

 いがむ。顔は気配を消す。夕どき、重なりは解消される。わたしは水を口に含んだ。ものはものに応えていた。

 日々のなかで裂け、間近で音が鳴り、ともかく明るく点滅していると、人(ひと)は背のなかにまぎれていった。ボウと煙が立っていた。ボウと煙が立っていて、よその記号のことまで考えていた、ように思える。

 表面に全てがあらわれて、出来るだけ空洞になる。出来るだけ空洞になって、その瞳に同化してゆくと、場面が一度に言葉へなってゆく。言葉を持って消えてゆく。

 音(おと)の度、小刻みに揺れて、あなたを蒸し返す。あなたは怖ろしさだけを基準にする。人(ひと)は語るに際し、まごついたり、大袈裟にならなければならない。涙を流している、人(ひと)は笑っている。

 手のマに小さく振るわれて、わたしは生きている。わたしは生きるに際し小さく笑わなければならない。義務ではない。

 日差しが小さなビルを選んでいる。わたしは細々とした言(こと)の断片を拾う。人(ひと)はあちこちに見えている。言語が違うと考えてそっぽを向いている・・・。

 熱を加え、とろみ、人(ひと)が掬う、わたしは結わえ、ものに手を寄せ、隙間を埋める。あァ、とためいき。見えなくなり、ただあなたの角度を見つめる・・・。