<920>

 水は緊張していた。張りつめて一滴になった。あれは激しい音(おと)の鳴り・・・。微量の疑いで、水面はちらちらと揺れている。

 そっと手を差す。無理に濁っている。たれか瞳を逸らす。水は見ている・・・。

 さぁっと手の払うよう、跳躍は、細長い一本の糸となり、めまえを輝く、何度も思い出す、行方はあちこちであたたかな粒となり、のち見えなくなってしまう・・・。

 慎重に舞い、おそらく、おいかけっこに、ちらつく、水飲み場の、日を跨いだ姿、に触れる・・・。かげにまた呼吸をひらきあなたを招待する。

 「あなたのあいだを忙しなく行き来する線たちはなに?」

 と。ひとは応える。わたしは次々に点を生むと。いや、点が湧いてくるのを見ている、と。前面に出てすっかり見えなくなってしまうあなたの振舞いについて考えていた。わたしは線を引っ張った。

 「あなたのあいだを忙しなく行き来する線たちはなに?」

 つまりはわたしの惑いの跡だと、おそらく当人の一番ピンと来ていないこたえを引っ張り出していた。

 ひとは水のために揺れた。ひとくちの熱狂のなかに軽やかに飛び込み、おとのにごる。ひとは食らう。ひとはなにものも前提としていない。ひとは隠れもしないのに見えていない。

 わたしは声のなかで不在になり、また地面の気まぐれとともにあらわれる。からだはあなたを見ていず、あなたもからだを見ていない。ともに揺らぐ水面を掴まえている。

 ひとつのあたたかさの演技のなかで、わたしは服を誘う。わたしの言葉のなかに水が混ざってゆく・・・。