<937>

 ここは道か。あなたがさきはうただひとつの道か。

 ひとりでに道の、香りかたへ細(こま)く揺れる。移す。

 意識が鈍色に、鈍重なその眺めに重なり。

 ひとつのかどを過ぎ、ひとつの煙たい意識のなかに花は匂う。

 わたしを小さく隅に移す。虚ろなままのなかに、手のひら全体で触れ、そっとヒを置く。

 なけなしの身体(からだ)を地面に静かに乗せて(馬鹿々々しい程ひんやりしていた・・・)。

 ふって来るものの姿、形はわたしにもよく分からない。ひとつ見上げている。ひとつ何ものも見えていない。

 浮かぶように過ぎ、晴れやかな匂いにむくと目覚めている気配に。

 ただからからとゆき、渡し、轟音の、どこでひらいているのかも知らず・・・。

 感興を蓄えてただひとり、そこに浮かぶ雲の匂いを待っている。ひとつのア・・・を運びながら・・・。

 あなたは洞穴にひそもうとしていた。あなたの声のよく響くところへ。

 わたしが緑色に変装をして、僅かに揺れてみせる。その隙間々々を、あなたは喜んでいた。

 ひとつの空が駆けた。ここで小ささを失う訳にはいかないから、どこか遠くへ駆けていった。

 安らいだ葉の隙間へわたしの笑みは乗せる。誰彼の別なく和らいでいる。そこになけなしの身体(からだ)・・・。

 ただのだだ広い空間を借りて、この場は鳥の声に染める・・・。