<943>「記憶の横に花は降る」

 その場にひとりでよろめいて。

 かけた言葉は外を過ぐ。

 香りをひと跳び、ふた跳びすると、巡る、巡る、それはいつか、あなたの記憶か。

 真黒。外は真黒。

 あなたの記憶の横、花はふる。

 あなたの手を音(おと)もなく過ぎて。

 見える、ひとは互いの歌に乗る。

 離れ、離れ、離れ・・・。

 めざましい、のと、ふたりは会話音(おん)、ぼゥとする明かり、ぼゥとする明かりにしばらくする。

 おの、おの、は軽口・・・。

 ひと、ひと、は触れない。あなたが歌を終えた。

 からだがまたひとりで白くなっている。

 からだがまたひとりの白さのなかにわたしをゥ・・・、おさめ、かくなるうえは、ひと、たいら、熱くなる。

 触れえた、触れえた。

 温度。曖昧な、あたしたちの触れ方。

 しばらくは葉、名指され、その場を少し、揺れる淀むひらく・・・。

 なんら、切り貼りのない、あなたの跳躍を、時間のうち、そとに出でて眺む。

 身(ミ)はいつからかまた動いていた。

 その道の先にあなたの手の握るのが見えた・・・。