<998>「記号のない時間」

 またもや増えている(あしのおと? 違うにおい? そよかぜ・・・?)

 たとえば鐘の鳴り・・・、響きの残る木、、

 その木、曖昧な木、その曖昧な木、、

 わたしの香り(言葉で表すしかないもの・・・)は、そのしたたかな、静かな風に包まれ、おのが鐘のよってきたるところをしらずところのその木に、触(ふ)れないような触(ふ)れィかたをする・・・、

 ふふふ ふふふ

 いまいちわからない、

 この肌をしたたかに撫ぜる風の、その仕草が分からない、

 無名の、無色の、無形(むギョー)のあしおとに直に触(ふ)れている、、

 ふふふふ

 ただ止まる、、(ときどき戸惑いつつ・・・)

 あたらしい香り、

 華やぐ名、その名のとおり、

 名のとおりの形になってゆく、

 似てくる

 わたしの肌にそれを染(そ)ました祖父の穏やかな笑みが見えてくる、

 記号のないところでわたしは応えた、

 たとえばやわらかな笑み、(破顔)(破顔)

 きれいな光のなかにまぶされている、

 ゆくえを教えて、、

 祖父は笑(え)んだまま小刻みに顔を横へふる、

 わたしはここで笑むことしか出来ないんだ、、

 そのあたたかさを瞬時に悟り、わたしは方々へ伸びていこう、

 と考えたと思う、うれしい、そう思いたい・・・、