<1156>「駆く、駆く」

 けぶっていて、前がよく見えない。

 穴か 穴か、穴なのか。

 車輪の回転、息、身体が重い。

 ひそかに繰り返しのなかに入(い)る。

 誰だ、誰だ、誰だ、

 この道はどこへ響く。

 昨日まで何の音もなく静かに沈んでいたところ。

 珠を次から次へ送る。触る。

 速い。速い。これはわたしの知っているペースではない。

 途中で、心地よく、その繰り返しが分からなくなり、

 足を離す。まだ回っている。

 これはどこまでも停止することがないのだ。

 ふと気づくともう漕ぎ出だしている。

 穴か、穴なのか、見たこともない。

 けぶっている。今日は雨なのか。

 岩であり、岩であり、岩である。

 頭上にけたたましい音が続く。

 頭上にはただひんやりとした岩の天井が続くだけだ。

 どこにいるのか。

 どこまで声を繰り返せるのだろう。

 道と、道と、道と、服があり、連なり、車輪は回り、一本の線になり、

 投げやりに唱えている。わたしの数がどこへゆくのかも分からない。

 後はただ運動をするだけだ。

 身体がまた繰り返す。

 身体がまた傾いていく。

 ひとつ、戻ってひとつ、また戻ってひとつ、ひとつ、ひとつ。

 足だ、足だ、足だ。

 あるいはただ円、ただ円、円のなかで言い、言い、言い、唱え、唱えし、

 道が分かる。朝の場面にいま再び集合している。

 一日目が終わっていた。途方もなく、一日目が終わっている。

 ただ中空を見つめ、だらりとし、回転の名残りが身体に混ざる。

 食べているもの、飲んでいるもの、座るもの、眠るもの、

 身体がひんやりと涼しく、頭がぐぁん、、と鳴っている。

 一体この運動は何だろう。

 岩が見える、けぶっている。

 誰もいない中継地点を見つめ、離れては思い出し、忘れ、涼しい眠りに就く。

 身体から回転がとれていく。

 投げ出す、、

 ゆるやかに渦の姿をす、