<1160>「目は昨日を捨てる」

 業突く張りの一日。

 業突く張りの目。

 目は同じ日のあなたを映す。

 青い空が回転している。

 また新しく、見えないところで何かに浸ってきた。

 それが無分別の朝だ。

 次の日に出合いぽっと小さく燃える。

 朝は燃えかすのなかにも入っていく。

 声は何だ、声は何だ、

 

 例えば、お前のことは全て忘れたように振舞う、

 もしか、例えば、お前には今日初めて会った。

 嘘おっしゃい、

 歩いていると段々に、冗談は行き場を失くす。

 目が昨日を捨てていく、

 目が昨日を捨てていく、

 

 素肌は多分、あなたに対する印象を持っている。

 それもまた 丁寧に剥がし、

 また同じものをつけて、

 内にゆけばゆくほど新しく、

 名前は後ろで控えていて、、

 一秒、揺れる。

  

 一秒毎に過去の印象が変わる一日。

 全的な朝、

 わたしは外れられない。

 わたしは朝以外を知らない。

 

 ほうけたままで、花束の友人に出会う。

 彼は時間のなかでわたしに声を掛けた。

 時間は太陽を見ている、太陽は微笑む、

 太陽は花束のことを知らない、

 

 暗い暗い雨の日のバスのなかで目は忙しなく交替していたこと。

 この呼気が夜を逸れてある別の同じ日まで辿り着いてしまうだろうことを。

 歩幅は変わらない。

 身体は業突く張りのひとひに同化しながら、なおもうち騒いでいる。

 うち砕けている。

 日と日のあいだ、形もなく、

 溶けて、溶けて、

 溶けて続いている業突く張りの時間・・・