<1167>「節の中で」

 冷たい音が陸を捉えている。

 今や軽々と飛ぶものたちで、飛んでしまった。

 時間の外の、僅かな木々が、揺れかかる。

 枯れをそばにいれ、枯れをそばにいれ、

 冷たい音はひたひたと進む、

 誰かが触れていた、

 無言で、うんとも、や、ともなく、

 縫合した。

 めりめりと音のする、、つめたくかわいたその根に上がり、

 揺れろ、揺れろ、揺れろ、

 はちきれる、

 堂々々と、そのなかをあらわした、

 まるでなにもない器、

 まるでなにもない土地、、

 土地全体で、今や木々だけになった。

 おそろしく、誰も喋るものがない。

 

 冷たい音は、何かが被さるにまかせた。

 およそ何も加えないものの上を、ひたひたと進む。

 長い時間をかけ こうして辿り着いた沈黙は見ていて飽くことがない。

 鳥ひとつ吹かない。

 風ひとつ。

 びょう

 

 天涯、ひとりの歩行者は適当な温度だけを持ち、華やかに咲く木々の残骸の前に立っていた。

 こうべを下げた、

 こうべをわずかに垂らした、

 彼はまだ時間に見られていた、

 が、彼の方では忘れていた、

 木々の残骸の前に立ち、ひとりで陽の出る方を向いていた、

 陽はいまはもう冷たいのだろうか、、

 なにも隠すものがなくなってしまった、

 そうして地べたをひとつ、ふたつ撫ぜた。

 このまま押していかれるのであろうか

 このまま引いていかれるのであろうか、

 

 冷たい音は過ぎ、陽は過ぎ、真暗になった木々の切れ端にひとりしゃがんでいるとき、

 このまま浮かみ、陽のまんまえに躍り出る、

 陽気だ、陽気だ、、

 節々がパチパチとはねてとぶ、

 こうべは落ち、ぐるりと巡る、

 瞳は素直に見た、、

 なにもない土地であった、

 一体誰なのかは分からないままだ、

 影を見、揺れる空気を見、幸福だ、

 幸福がかわいた根を立てている。

 一散、一散、

 張っていた空のなかに住まおう、

 ここは音のない地面、

 静かな人、

 映る木々、、