<1173>「微塵」

 あなたが自然に生まれたのでないならば、

 突然の歩行でないならば、

 今 なんのためらいもなく揺れているのは、

 

 ようけようけこぼれなすった。はい、どうぞ。

 ここからやがて溢れるまま、

 転がるままに、ね、ね、

 どうですどうです、身を持ちました。

 はい、はい、それはもう、

 それはもう大きく手を叩いてみせるのでござます、

 ね、ね、

 

 どうしても

 わたしの前にいるのはあなただけではない、

 そこを少しの間のいてくれますか、

 わたしはあなただけを見ているのではないのだから、

 遂にあなたはわたしを連れてどこかへ閉じてしまいそうになりましたね、

 それは出来ません、

 それは出来ないのです。

 ですからあなたもどうぞ、そのまま幾方へ散じてください、

 そのまま、散る方へ散る方へ、

 また小さく小さく、微塵となって会いましょう。

 一切照れていましょう

 一切散じていましょう

 今一度後ろめたくありましょう、

 一個の身体ではありませんか、、

 

 やがて晴れるでしょう、

 水は水の先をゆきます、

 どこやら煙も昇りましょう、

 同一の景色を見ますか、もしやあなた、

 

 どこまで先へ行ってもこの顔は同じようですよ、

 変ですね、まだ欠片ぐらいにしかならないのに。

 あなた分かりますか、

 そうです、しかし、そこは声ではありません。

 そこは恥じらいでもありません。

 ただ過ぎるだけです。

 一切の門を叩いているだけです、

 起きてきて、あまりに静かですから、表情ひとつ変えれぬまま、長く長く驚いてしまいました。

 こんなこともあるんですね、

 また会えました、、

 時折呼んでください、、

 遠方へ遠方へ、また遠方へうんと声をかけてください、

 そこで空は尽きます、

 そこにあなたの身体も置きます。

 寒いでしょう、寒いでしょう、

 カコン カコン カコン・・・

 さあ、さあ、

 よくつむって、、