<1417>「ひとつの呼吸をたよりに」

 揺れが立って、

 あたしがここにいる、、

 あたしはここに打ち上げられただけだ、、

 ほんの、一時の波の違いから、

 立ち上がり方の違いから

 揺れてここに来ている、

 

 来て立って、、

 身体がしぶとく、そこで重さを持ち、、

 私の方へ、、

 長く長く滞留していること、

 とどこおる音 をその場できくのと、

 どこからどこまでが身体に含まれ、、

 どこからどう漏れて身体の外に行くのか、

 それを知らないさまを、、

 それなりの遠くから見、、

 呼吸が消える、、

 

 消えたままでその揺れてきかたを見る、、

 私が途方もなく長い時間であることなどを、、

 そこで見るようで、、

 上手く見たような気がしない、、

 呼気もそれ以外もあらわれ、

 私が点であるという錯覚にかえる、、

 ひとつの呼吸を頼りに、、

 身体の、、

 振動数を上手くさわりながら、、

 そこに見る、、

 

 圧し、流されていくさまを、、

 静かに見留め、、

 時々無言であり、時々言葉を少しだけいれる、

 いれただけ揺れる身体、、

 身体だけはじく流れの、

 そのなかへ、、

 静まった時間の振れを、、

 淀んで音が 混じり合い、、

 ただの一音も確かなものはなくなったところで、、

 一種無感慨に、、

 歩はそこを行く、、

 

 行くときの身体をただ自分で見て、、

 自分で見ていると何かどこまでも遠のく、

 あたしは見事に呼吸する、その内側へ来た、、

 何が跡になってとどまっているかはよく分からないのだが、

 ここに来た、、

 歩と不鮮明が混じりながら、、

 そうしてここへ流れ流れながら来た、、

 不断に染みてく、、

 身体の色も形も、

 知っているものから、ほとんど知っているものへ、

 あちらの方へ渡る言葉に、

 どう触れる、どう馴染む、

 呼吸の内側で、、

 停止する混雑を見ながら、、

 僅かずつ風を通す、

<1416>「どこかで別の人の笑いが」

 日が垂れ、まだ垂れ、まだ私のなかで、

 まだ相応の色み、

 身体の濃さをもって、、

 ここへ溜まる、、溜まったものが、意識されなく、、

 それが遠のくと同時に見事に、

 無事線になり、、

 外から見るとまるで消えたようになる、、

 

 その消えのなかに新しい回転をあらわし、、

 活動の、運動の大胆さのために、、

 全ては一度後景へ、、

 後景で色を消してしまう、、

 私は、、新しい回転のなかに、、

 

 運び手が、、回る輪の音が、、

 手の単調なリズム、、

 線引きのなかに、一見すると見えないような為方で、、

 上手く溶け、、溶けてあらわれて、、

 そこからだらだら、だら、ずるずると、、

 無事に線がいくつもそこに連なる、

 線になって見事に溶け‐流れの一部になりながら、、

 少しのはずみで、、

 別様の時間の感じを、

 そこへ少し置く、、

 

 置かれたものにほうとした視線がかかるように見えた、、

 誰彼構わずにここへ押し寄せてきて、、

 なにかひとつの言葉を成している、、

 私はいくつもの角度に映っていた、

 そのほうけとしか言えない在り様を、、

 半ば笑い、半ば遠くに見ることで、

 また、身体を少し可能にする、、

 

 可能にした身体、、

 いくつものずれを引きずり、、

 どうにか、

 なんというと、、ぼやけ、ぼやけている、

 そのあいだに、、

 新しい回転とともに作り替えられていくさまを、、

 知っていた、、

 これはどこかで別の人だ、、

 境い目はない、

 これは別の人だ、、

 

 どこかで別の人がいて私はそのなかに映る、、

 光線にも満たないほど、

 ひどく、、曖昧なものが、、

 こちらの方を、、じり、じりと見詰め、

 そのなかでとけていく、、

 とけていくさまにほうとしてじ、じ、と付き合っていた、、

 これはなにの時間なのかと思いながらじ、じと、

 じとして、

 想起の外へ、、多量の膨らみを残しながら居るのだ、、

 これはなにの経験を見ているのか、、

 また日が垂れていた、、

 私はただ目をアいていた、、

<1415>「静かな形」

 まだただ たらたらと赤く光るものの通いの内側で、、

 私は動いていた、、

 今は、その、ぼうとする呼吸のまっただなかに居るということは言えなくなってきているのかもしれない、、

 どうにかこう、、

 巡るものの上手く身体から流れて少し静かな形だけを残す、

 息の音がまるで聞こえないぐらいに、、

 

 激しさ、もまた、、体表面の一部ではあった、

 私はそれを、嫌な目をしながらつまむことはない、、

 なにかこう、、

 激しく走り、走られたことが、、

 遅れ、遅れて、、何度もこの小さな場所を、

 打って、打って、

 続いて、

 日から日を跨いでなにか大袈裟に表情を変えるようなこともしないまま、そのまま、、

 ここまで、、

 続いてきているのを少し思うようだ、、

 

 その時刻から私も一部分々々々と細かくなり続け見事にこぼれ続けているような具合だ、、

 どうにかこう、、

 流れている身体のなかにいくらかの線を通して、、

 外に張り‐振るわせていること、

 を、、なんとかこう、、

 跳ね返って伝えたい、、

 また、、そのように跳ね返って種々別々の時間のなかへ当たり前に顔を出しちまうことなどを、、

 どこか、遅れたタイミングで聞き及ぶ、

 聞き及んだ身体が、、

 静かな形でおさまっていた身体が、、

 その背景のなかで上手いことひらきながら、、

 どうにかこう、、

 出でて出でて出でようとして、、

 そのまま膨れたもの、

 を、練り合わせている、、

 

 それぞれがまたひとつの身体の残りを、、

 音の、、混雑する向うへ見留め、、

 ふらふらと歩き、、

 別の場所へ出た、

 別の場所へ出てそこに とまり身体が、やけに、

 やけにしっかりとしてきて、、

 そうか、なんとかこう、、

 音の先にあるこの、そのままあるものを、

 上手く手繰ろうとして、、

 そういう訳にはいかないことなど、

 ここではっきりとしてくる、、

 その速度と、、身体の存在が見事に合ってくる、、

 

 なんとかこう、、

 くらくらとした、その様子へ、、

 かつて身体があって、、動いていた、、

 そのことを、、

 なにという違和もないまま上手くここへ馴染ませたい、、

<1414>「声の圏内から隔たって」

 立ってそこ、窓のそばで見ていた、

 立ってまだ見ていた、、なにものか、

 より長い時間、、

 合図を、合図と得て、、

 身体を振っていた、、

 私が見ているその向こうで、、

 

 その向こうで、向こう側で、、

 身体にしか出来ない声で、、

 その、在り方が、振るわれること、

 そこに出ること、、

 そこに出たことを確認すること、、

 なにかは分からなく、、

 掛け合う声の圏内から、少しへだたって、、

 見ている私の目を何事かと、、

 その一日の進行よりも遅く思われる、、

 おもむろな動作を、、

 不意の起立を、

 その向こう側で見ている、、

 

 ただその時間だけ、その時間だけは合図になりながら、、

 身体が小刻みに動いて、、

 私の前で、、私の知らない細かさ、

 素早さのなかにい、

 ただ私が知らない時間から幾度も幾度もこちらの存在を確かめている、、

 なぜこの時間にあの向こう側はいないのか、、

 どこまでも不思議だ、それに声もしない、、

 私が頻繁にこのように鳴るのに、

 このように鳴るだけのことは分かるはずで、、

 しかし、、別様の動かし方で、、

 そこにいる、

 

 どうも長い時間振る音もせないようで、そのまま、、

 倒れかかりもしないまま、、

 どこか、後ろの方を、、

 私の後ろの方を見ているようではないか、、

 その後ろにいた私の羽搏きを黙って見ているようでないか、、

 そうかしら、、

 振動していて次から次へと忘れた、、

 

 しかし、、飛行は忘れないであろうな、、

 そこで、、憶えられるまでにもいたらなかった、、

 ひとつの羽搏きの集まりが、、

 その緩慢な時間へどろどろととけひろがりながら長く長くここへ残った、、

 残っているものが今もなかなかそのままの姿の様を、、

 ここに見ていた、、

 見ていて、なんの音もせなくなって、はりついて、、

 少し生きていることとは別様に、

 その合図々々の繰り返しには知られない時間へ来ていて、、

 ひとりと、

 どこかで音もなく点滅するということ、

 立ち上がってかきまざり、、

 また、圏の外で、

 すばやい声が、

<1413>「踊る泡のなかへ」

 あらくはじかれているところへ、

 歩と歩、、

 身体自身の重さだけを頼り、、

 ふらふら、

 ふらふら、、と、、一辺の方へ、

 身体がその重さ、流れに対して、

 ぱあっと、

 当たり前に出来上がってくる、

 出来上がったものがまた独自の煙を立てて、、

 し、

 しばらくはそこから見えなくなる、

 

 見えなくなっているもの、

 そのなかで、、

 踊る、、方向を、一度も、確かめることなく、、

 このあらくはじきだされた感慨の、遥か彼方へ来て、

 踊れ、踊りましょう、、

 あたしの流れて来方、その後方へ薄い煙がのびて、、

 次々にそちらを見やる、

 見やるのけれども、、

 なにかなのか分からぬ、、

 誰かなのかも、、

 あたしとあなたでどちらのほうけがまさるのか、

 その表情を、

 じっと見詰める、、

 見詰める、

 

 見詰め、見詰めるこの時間があることが、大層おかしくなって来るようで、、

 張られていた糸が、びんと嬉しそうに、、

 高く声らしきをあげる、

 声らしきを、、

 

 それが上手く通る場所らしく、、

 人、に踊る影、

 がどうも映るかんじがない、、

 映るぎくしゃくとしたかんじが、、

 どうやら影の外に出て煙へ、、

 表情を隠し通す必要もないまま、、

 曖昧な、踊りのさなかへ、、

 ずん、ずん、、ずん・・・、と、

 出でて来てしまったようなのだ、、

 ・・・、

 よろけている身体をここへ、、

 曖昧な空間がだらりと身体の方へ流れて、、

 またたくまに包み込んでしまう、、

 またたくまに影のあらわれない、、

 ひとつの踊りからの音のほうへ、

 ずん、、ずん、、と、

 

 それほどにこのあらく、

 はじかれているところへ来て、、

 ぶくぶくと泡を立てながらしだい、しだいに潜り込んでいくのを、、

 見詰め、見詰め、、びんと、

 時に楽しそうに跳ね上がり、、また静かな場所、

<1412>「渦のなかに溜まり」

 その、流れが溜まっているのを、、ここの肌全体で受けた、

 身はかわされなく、、

 何か残るままの言葉、言葉にもならないところでわだかまっているものをここらへんに見せ、、

 それが流れていくのを、、

 微動だにせずに見送る、、

 

 私は、どこか、、何もあらわれていない、新しい時間に対する構えを見せ始めて、、

 それが、どこまでもすみやかに、、

 後ろにありとあらゆるものが映っていて、

 その呼吸が、、

 徐々に混ざっていき、知らないものとも、、

 あたしが、ここで、、

 ほうと流れているのは、、

 いつの地点からか当たり前のことになっている、、

 

 その、呼吸の範囲で、、

 揺るぎながら来る、、

 あたしの目の流れは、方向を探していなかった、、

 声が、当たる場所によって、少し賑やかになるのをなんとなく見ていた、、

 見ているとその声が伝わる、、

 その声がはなやぐ、、

 もう駆け出しそうになった、、

 身体のなかに次々に渦が、その勢いが増して、、どこの、何とも確かめられない振舞いが、

 いつの地点からかは分からなく生まれていた、、

 

 余計に散らばるエネルギーを受けて、、

 その身体に引っ張られてきて、

 そこで、ほうとする時間をあたしに選ばせるもの、、

 あたしはここで何を語りかけようともしていない、

 余ったものがここに当たって一杯になり、、

 僅かのあいだだけ時間を止めている、

 そのさなかに、、

 身体からこぼれてしまいそうになっているのを、、

 今日の明りが確認する、、

 

 訳も分からずに色から色へ、、

 静かさから静かさへ、

 移っていってその隙間に私も、、

 ひとつのずれを、

 あって感覚を確かめて、、

 まためくれて、、後ろの方になって、、

 人、また人、ものというもの、

 まったくそれらが一杯になり、

 はりついて、

 僅かに時間を止めているようなところへ、、

 歩を置いている、、

 ひとつひとつが遠くまで響く歩を置いていることに、、

 なにとも言えない、、

 誰の隙間に来ているのだろうかと、、

 後ろの方で音もなくなった風景をまのあたり見る人々の隙間に、、

 訳も分からずに歩を置いて、少しとどまりながら、

<1411>「濃い点が降りる」

 なにげなく緩んではいった、

 訳もなく口をアいて、、

 そこへ、、ただ全時間と同じような重量感が上手く含まれるように、

 ひっきりなしに、その日を、ただだらりとアけて、そこで、静かに待っていた、、

 

 日は対面し、

 日は、アいた口を見、、

 ただ戸惑っているばかりか、、

 はしゃぐのをここで忘れもした、、

 どうにか、こうにか、、

 その光線の、終わりのところまで、

 表情を見せて、、

 口の凝視にほとんど乱されていながら、、

 ここへ続いている、、

 

 見るところから見るとこのなんという温度かは分からない空間で、

 どこまでも重なりながら動いて見えていたそうだ、私は、、

 そんなことは一度も知らなかった、、

 知らないままでなにかとこの重なりのなかで、、

 全時間の分だけ生きてきたのだという気がする、、

 

 その生き方のさなかにも、、

 なにほどのアいた穴を意識し、、

 あたしは通路が幾方向にのびているのを、、

 そのままほうけながら見留めて、、

 僅かでありながらそれぞれへ、、小さく声を返す、、

 

 お前、お前、、

 お前という、、

 ひとつの声が差して膨らんだ身体のなか、、

 現れて、、

 現れているままにその姿を見留め、、

 それは、それは、

 それはどこからの響きですか、、

 もうずっと長いんですか、

 私が持っている時間は多分このくらいだと思うのですが如何か、、

 などの、、

 ひとつの声をする、、

 

 底の裏あたりにひたと身体をかけて、、

 連続して響いたものがより広い空間へ、、

 初めにただ小さなひとつの手を出だすとき、

 私には 時間のかたまりが外に向かって流れ出すような気がする、、

 それが目を、アいた口をとらえて、、

 長く入っていくことになるような、、

 なにとあらわしようもないことで、

 響きが続いて、、

 身体がいくつもの層、、

 それがリズムになり、、

 時々温度が変わり、、

 流れにやや濃い点がおりる、、