<1882>「古層の中の物音」

 私は渡り、

 ひとつの点のなかへ漏れる、、

 溢れて、

 ここにひらべったい、身体をのばし、、

 一量の水を受けて、

 生まれる、、

 私が黙して揺れていると、、

 なにやかやと声を掛ける人がいる、、

 その隙間で、どうも、物事が、、

 うるさくかさなり、、

 なにだ、なにだ、、はらえたらばいいな、、

 ここに音が鳴らなければいいな、

 ここは広い流れであった、、

 私が物の中を覗き、

 そこで泡が立っていると、

 不安と、そこで生きていることが、合わさり、、

 今に帰って来る、、

 問う事と、問わない事を、、

 この面に集め、、

 私は大きくなりながら、、

 ざわざわとする一点のなかに入ってゆく、、

 

 あれ、あれ、、

 まだあらわれてもいないのに、、

 きっと湧き立って、、

 当然のようにそこで待つ人をつらまえる気でいるもの、、

 次々に来い、次々に来い、

 私はここに剥がれているから、、

 最古層が、今表面にあらわれて、、

 ただ水から遠くなり、

 ここで静かに構えているから、、

 なにだなにだ生きたまま、

 私はそのなかへ入る、、

 入ってまた生まれて、

 隙間から徐々に生きていく、、

 

 はたして、誰もあなたのことを気にしてはいないという響きの割に、

 私は次々に質問を受けるのであった、、

 まったく放られて、

 なにも、

 本当になにも問われないでいられれば、

 というのが私の願いであった、、

 夕方、ひとりで帰る方法を模索している、、

 昼間、ひとりで過ごす方法を探している、

 けっきょく、私はおのがなかへ鐘を受けて、、

 その響きに自身を浸したまま、

 なにがしかのリズムを流したままにしておいた、、

 起伏する、起伏する、、

 ただの明るい光、

 ただののびやかな姿、、

 あまりに核心部分へ触れて遊びつづける、

 受け続けることに馴染んだせいか、、

 当たり前の話をしていると身体がだらだらと溶けてくる、、

 穏やかな幸せ?

 私は、日曜日の昼間に皆が集まっている時間が苦手だった。

 はやくほどけてゆきたいと願っていた・・・

<1881>「零からさらに遅れて」

 その等しい手に触れて、、

 私は驚くことがあった、

 なぜいまここからひとつのものだけを上昇させて行く必要があるのか、

 まるで分からない、

 そうだ、まるで分からないと思った、

 選ばれては困る、

 とにかく、選ばれては困る、という意識と、、

 重たい鉛のような時刻があった、、

 そのあとの日常というものは、

 あっけなく、からりとしたものだから、、

 あたしは零から、

 その、あっけないところから常に始めたいと思っている、、

 

 アタシハヒトビトノイチバンアトヲイキマス、、

 鈍だ、

 遅さの問題だ、、

 こういうことを言う人というのがあって、、

 それはさすがだな、というか、

 据わり方、、

 並ではないことだと思う、、

 私は一番後ろを行けているかどうかは定かではないけれど、

 遅いというのは大切なことなのだろうという気がしている、、

 人間は遅い、

 まず足が遅い、、

 しかし遅い速度でどこまでもじわじわと先に行く能がある、

 育つのが遅い、、

 ここに遅さを持つことによってじわじわと脳を育てることが出来る、

 ?

 そうなのかどうかそれはよく分からないが、、

 気持ちとか精神とかいうことが大事であることは分かる、、

 だが精神論は分からない、

 論なら論でその体裁は整えましょうや、

 筋道はきちんと理論で立てましょうや、

 それを 見えない場所で、

 別のところから静かに支えているのが精神の役割ではないでしょうか、

 論と一緒にしたらいけないと思う気持ちがあります、

 

 なにかのために出てきた訳ではないものに対して、、

 一体これは何のためという問いを、

 その立てたくなる気持ちは分かるけど、

 立てていったら上手く行かなくなるのは自明なので、、

 なにもないところから、

 あちらこちらへずれて、

 重なって、、

 ほぐして、、

 また煙になって帰ってなくなったと思ったあとに、

 なにか零であったはずのものの、

 影響が目に見えたり見えなかったりするところで残る、

 それがどうということもなければ、、

 びっくりするほど多大だったりする、、

 それはそれとして一日は粒である、

 意識は無限である、、

 というところで、なにか揺らめいているもの、、

 探る探るこの手の動きだ、、

 なにかを掴むためとかそういうことはよく探る手の動き自体が生きているだ、と思う、、

<1880>「小さな水が集まるところ」

 私がその形になるのを知る前に、

 手はなかにはいり、

 そこをうかがう、

 うかがったらなんだか当たり前の、、

 小さな空間だけがあり、

 私はひとりで驚いている、、

 なにがこの身体のなかに掛かり、

 ひとつの声になっている、、

 私は花を見るが、

 一本取って持って帰ろうとした途端、

 なんにもおもしろくなくなる、、

 あなたも私と同じ身体だ、

 それだからなにも不思議なことはない、、

 私は皮膚のなかにはいり、、

 そこで、一量で、盛り上がっている、、

 声もただ低い音を時折出すだけになる、、

 

 私は不安定な水の中に混じってゆき、

 そこで生き、そこで漂い、、

 そこからただごとではないとひとりつぶやくところまで、

 訳も分からずに来ている、、

 あたしがあたしのリズムに乗り、、

 その様子をまた身体のなかへ畳み、、

 ひどく、そこで泡を立てようとするが、

 そういう訳にもいかない、、

 静かな練り上げ、、

 静かに触れる動作、、

 像が出来、

 ほうと息をつく、、

 私はまた像を作るのだろうから、、

 手がただアいて、、

 ぶらぶらと所在なく揺れる、、

 私はその一点にまた生まれているのだよ、

 気づいたかい、、

 

 階段を、繰り返し駆け上がり、、

 息を切らし、

 何故ここに来たのか、、

 なんのために駆け上がっているのか、、

 どこまで続けるのか、

 分からなくなって、、

 ただ多く水分になった人間になるのは、

 嬉しい事だ、、

 嬉しい時間に私はいる、

 誰がこのまといを、

 時間とのあいだに、作るのに長けていたのだろ、、

 この冷たさがひそかに、

 しかし確かな響きをもって私に伝える、、

 あなたはよく走りなさい、、

 ここで私は速度計、

 メーターを眺め、灰がかる外景を眺め、

 メーターを眺め、震動する手のひらの紋様と小さな本を眺め、、

 この途中の、誰かも分からない道に、、

 あたしも少し溶けて落ちているのかどうか、、

 確かめ得る方法はないが、やや、ここの肌は、やわらかい・・・

<1879>「全く涼しい一点」

 次々そこに声が出てきて、、

 私は、あんまり遠くへ来たのも忘れて、

 静かにはしゃいでいる、

 あれ、なんで、そうだな、と、、

 ひとつの身体のなかに、

 多量な響きが埋まっている、、

 そのひとつが、当たり前に風に乗って流れた、、

 海の近くで、

 人はたくさんいるのに、、

 あまり声がしないと思った、、

 ただ当たり前に、遠くだけが見えていて、、

 あたしはその場所でしばらく、生きているのを忘れていた、、

 あたしはただの白い器になっていた、、

 

 構えて、

 だんだん土の中へ深く沈んでいく自分をイメイジした、、

 そこからまた足の裏で地表面を掴まえるところまで戻り、、

 そこに静謐な姿でいる、、

 あたしは、この夜だけが他から独立しているように感じてくる、、

 手と、

 木の匂いと、、

 涼しい鳴き声と、

 風とがあるだけで、、

 私は回転する、

 ここに生きて帰ってくるために、、

 私は回転するのじゃないか、

 他になにがつらなろうがつらならなかろうが、、

 私はここを静かな力で、、

 握る、、

 私は本当の一点だ、、

 そうして小さな風に揺らいで遥か遠方まで行くことの出来る、

 小さな一点だ、、

 身体よ、持ち上がれ、、

 軽くなれ、、

 それはどこまでもこの日の、

 この日の連なりを含んでいるものの姿となる、、

 

 あの人の目、

 そうだ、どこか、暗い夜から持ち込まれて、

 あの一点に据わる、、

 あの人は微動だにせず、

 土を、

 煙を、、

 風を吸ってきている、、

 それが私には分かるので、、

 ひとつこの喧騒が空白になるところまで入ろうとする、、

 ひとつこの大仰な揺れが全体から諸々の粒を受け、

 集まって、

 沈黙してしまう一点に、入ろうと思う、、

 ・・・

 身体は後を追った、、

 私は、ここに夜のあの時日を持ち込んで、、

 跳ねていた、

 楽しい、、

 どこにもはしゃぐ線が出てこないまま、、

 私は静かに笑んでいる、、まったく涼しい、涼しい、ここは・・・

<1878>「内側の鐘」

 その軽さのなかに自分の粒のひとつを見つけて、、

 輪郭の、なくなるまで長い時間、

 そこへ置き、ぼやかしておいた、、

 普通に、僅かになる端の意識から、細部へ、、

 あたしは腹のなかへ小さくなって入る、、

 その意識の隙間、

 私が生まれて止まないところへ身体を預ける、、

 なにやら、顔のない、

 音のない、

 潜って、ただ、そこに呼吸だけがあらわれる地点へ、、

 すみやかに往く、、

 身体だけがあたたまり、そこへ、ひとつの印をなして帰ってくるものなのか、、

 私は腹中を探り静かにひらき、

 この事が作用して一所に連なるのを、

 ただに見つめていたのだ、、

 

 たれかこの鐘を内蔵して、、

 ひとつまたひとつと包まれてどこかで、、

 不透明な音が漏れている、

 あたしはこのような振動に列をなした、、

 どこからほどけるか、

 ほどけたところから風が入り、、

 今わたしのところへ駆けてくるのに相違ないもの、、

 なにが揺れて、、

 なにがこの時日を確かめ得る、

 私は知らないけれども、、

 そのまま、長い時刻でふるえて、

 長い時刻にひとつの姿で当たり、、

 また増える、、

 私は印が増えて行き、

 呼気のあたりかたもそこへ、層を作り、、

 長く生まれて、

 長く流れることになれ、、

 額になにかがついてあらわれ、、

 私は手探りする、

 ここは宇宙かもしれないので、

 静かに踊る、

 

 ただこの様子に触れたままで、、

 私は一切が色、一切が事の、、

 印のなかへ、

 さんざばらばらへ飛び込む、、

 曖昧な光や、

 運動や、、

 温度で、

 この地表面に静かに滑り出していた、、

 私は回転するのに、、

 今だの先だのと、熱を求めて、、

 平等で手を付けていた、、

 なんとこのような揺るぎが、

 先端に伝わり、、

 ここへ生まれてはまたはじけて、うつり、、

 ひとつひとつの点と、染みと、姿、、

 そのものがただに模様、

 そのものがただにとぼけた姿・・・

<1877>「豊富な身体」

 はたしてその色を知らない場所に出て、、

 ただ私は困惑するようだ、、

 しかし日は回転するようだ、

 このさわぎから離れなにも物音の立たぬ、

 ただなかへ、

 ひとり身体をかきまわしているものが見える、、

 私はそこで小さくなり、、

 まだその底に火がかかったままだ、、

 じらじらと燃え盛るさまがあらわれては消える、

 そこに音はない、、

 私はこのままただに白くなり、、

 その先へ、駆けていくのか、

 分からない、、

 あたしがどこまで駆けていくのかなど、、

 それはただに白く、

 私は風景を確かめるともなく地面を踏んでいく、、

 水をはじき、、

 身体をはじき、

 私は跳ねあがる、、

 

 跳ね上がりながら私は空洞の、、

 ひとつやふたつの音を立てて、そこに、、

 なにとはしれず表情の、

 あらわれだかなにだか、、

 さあさ、おはいんなさい、と、、

 ただ誘われ、ただ騙されていくまま、、

 私は身をそこにのばした、、

 全てが、液になり、、

 だらだらと流れて、

 私は、途方に暮れていた、、

 身体を続けているもの、

 そこへ静かに寄せて、、

 あたしのただなかでさわぐものへ、、

 日常平穏の風が当たる、

 あたしのそばで誰かが話し続けている、、

 私は、筒だ、、

 そのとき心臓がひとつだけ見つかり、、

 私の中で点滅する、、

 私はこの人の熱量を静かに通過させているのだと思った、、

 どこまでも来い、、

 どこまでもみだれ、なかで、渦を巻け、、

 つらなれ、

 そしてあなたというあなたはここへ含まれろ、、

 そうして水で膨らむ、、

 私はずっと以前より水になり、、

 あなたが入ってそこで清新の気を成している、、

 

 あら、あら、じた、じた、、

 ひとつ、

 顔が分かれて、、

 新しは薄暗い方、、

 人を僅かに誘うだけの、明かりをそなえたその方へ、、

 ただに身体を這わせ、、

 なにの、液だか、、たれの、種だか、

 を、ひとつ、また多量に、てんでばらばらに、

 拾い、拾い、、道に身体を馴染ませていく・・・

<1876>「身体層を剥ぐ」

 その僅かな時刻のなかに生まれて来ては、

 小さな様子で漏れ、、

 上手く継ぎ、

 あらはれる、姿一切の人々、、

 当たり前に垂れ、

 当たり前に見えて、、

 私は、紛れたいだけ紛れていくように見える、、

 その新しい身体に当たり、

 四方から、四方から、さわいで、続いて、、

 じっとここにいる、、

 じりじりとここにいる、、

 じりじりとここにのびてひらいて、、

 今また見つめ、

 ひとつの手をくれ、そこ、そこ、、

 私などなにかこのなかに湧いてしらずしらずのうち、

 知らない所に出て、、

 ひゅっ、、と、ひとりだに発話せない、

 そうした場所の、

 風のひと吹きを、、

 この眼に確かめ得る、、

 

 思えばここに身体証拠が徐々に溜まっていくのを、

 不思議といえば不思議だと思い眺めていた、

 なにだなにだどこから、

 身体が抜けて、、

 私はそのなかへ染みる、

 と思い、、

 浮かぶひとつの印に、

 私はのびた、、

 次々に来て、次々に掴む、、

 掴むものが多くなり、この場所で、

 ぼんやりとし、浮かんだ、、

 誰かしれない勢いのなかに、浮かんで、、

 次から次へ、生きていた、

 

 しらずしらずのうちに身体はここへ垂れて、、

 いまひとつそのしぐさのなかへのび、、

 私はひとつひとつのしぐさがきこえ、、

 その端に混じり、

 次々に巻かれていくものと見える、、

 あれ、身体の隙間から、

 どうどうと溢れ出、、

 私がいたもののうえに徐々に、

 白い覆いが来る、、

 なにげなしその曖昧な空気、色味のなかをあるき、、

 地を掴み、、

 この先にいて、訳が分からなくなる、、

 身体が次々にひらき、、

 徐々に糸が出、、

 糸のなかでもぞもぞとし、、

 なにだ、あたしは、、振動するばかり、、

 身体が熱い、、

 激しく揺れて、、

 またそのなかを目指すべく、、

 かわいた空間のなかへひらく、、

 皮を落として・・・