2019-01-09から1日間の記事一覧

<811>「朗読」

僅かにアいた口から小さな音の、連続(と)して漏れるとき。 私には点と、丸の、その間の息継ぎばかりが触れてくる。 私には、呼吸を間違った、という感じがあった。点と丸ばかりが文章であった。間にあるその文字は何であろう。例えば、飾りと、言えば言え…

<810>「水のなかで、夢は透明になる」

人間がひとりで夢を見ていた。 僕は願望を見ていたのではない。 苦痛をそこで消化したのでもない。 懐かしさにかまけていたのでもない。 誰か。 何故か。 ひとりの人間に対して、経験は多すぎる。 私は夢に溢れた。 私は無意識にあぶれた。 あの人は30年間…

<809>「よだれという惑い」

口が、おそらく、アいた。 ただし、私は記号と、感情と、惑いが混ざりつつ、押し合いつつ、遠慮しつつ、ハタからこぼれてゆくのを見た。それはまた、考え難いよだれでもあった。 よだれには名前がない。よだれとして毎秒々々流れ続けるものに決まった名前は…