厨房へ戻るのか、フロアを回るのか

 「色々なことを同時進行で行うのが苦手云々~」

というような話を見聞きして、

「ああ、それは私にも当てはまるところがあるなあ」

と思ったものですから、ひとつ、居酒屋でバイトしていたころに抱えていた苦悩について書いてみようということに思い至ったのでした。

 居酒屋でバイトをするということになれば、

「厨房に入って調理を担当する」

か、

「フロアに出て、接客や配膳を行う」

かのどちらかに役割が限定されるのかな、と思いますが、私は後者の仕事しか体験したことがないので、調理のことはよく分かりません。

 それで、フロアに出て接客する仕事というのは、まさに、

「同時進行のオンパレード(居酒屋などは特にだと思います)」

というような感じであり、

「お客さんを席に案内する」「オーダーを取る」「お酒・料理を出す」「お酒・料理を下げる」「お客さんが帰ったらテーブルの片づけをする」「会計を行う」

などの仕事を、各々のテーブルで順不同に、バラバラに少しずつこなしていく必要があります。

 そして前述の通り、私はこのように、同時進行的に複数の仕事を進めていくのが苦手なので、忙しさゆえ様々な仕事が同時に発生しているときなど、

「まずどれから手をつけたら良いか」

ということが全く分からなくなってしまいます。様々な仕事が同時に発生しているときの、優先順位というものがまるで分からないのです。

 ですから例えば、

『私は今フロアに出ているが、ここは一旦料理を取りに厨房へ戻った方が良いのだろうか。それとも、フロアを回って料理を下げたり、万が一何か注文があったときのために備えて、フロアに留まった方が良いのだろうか。勿論、皿が空いていれば下げたら良いのだろうし、注文があれば伺えば良いのだろうけど、もしフロアを周ってみても、皿が空いてなくて、フロアに留まっていても注文が無かったら、無駄な時間を過ごすことになるのではないか。それだったら早く料理を取りに厨房へ戻った方が・・・。あっ、お客さんが帰るみたいだ。そしたらテーブルの片づけをしなければ。しかし料理を運ぶのとどっちが先だ。あっ、遠くの方でまた別のお客さんが呼んでいる。そっちが優先か。でも料理はどうする。早く運ばないと冷めるかもしれない・・・。』

 というような状況に置かれたときに、混乱してしまって、どれから手をつけるのが最適かということの判断がとても難しいのです。

 むろん、私は居酒屋のバイトを半月ほどしか経験していませんから、長年働いている人からすれば、

「そんなことで悩むのは当たり前。最初は皆そこで苦労するし。何年かやっていれば感覚が摑めるようになるよ」

と言いたくなるようなことかもしれませんが、私は居酒屋での経験について、

「ちょっとあまりにも向かなさ過ぎるし、この同時進行の判断処理を何年もやらなければいけないということになると、とてもじゃないけど、どこかのタイミングで参っちゃうな」

というような感覚、感想を覚えました。