症状がないときに続ける難しさ

 『では、これから1週間、飲み薬と塗り薬、どちらも1日2回だったところを、1日1回に減らしていきましょう。それでまた、次の1週間は2日に1回という具合に、徐々に薬を減らしてください。急にやめるのは良くないので。』

 

 私は、皮膚が人より弱かったために、幼少期から今に至るまで、万年アトピー性皮膚炎のような症状に悩まされてきた。しかし、成長するにつれ、この身体も症状に徐々に慣れてきたのか、幼少期ほど症状がひどくなることは最近では少なくなり、今は、常に塗り薬などが必要だという状況にあるわけではないところまで来ている。

 それでも、市販の薬ではどうにも対処できない程肌が荒れることが、今でもたまにあり、そういうときにだけ皮膚科に赴くのだが、やはり病院で薬をもらうと、その効き目というのは素晴らしく、市販薬で対処できなくてあんなに苦しんでいた肌も、2~3日もすれば元通りになってしまう。

 だから、1~2週間分ぐらいの薬を処方された場合、その半分以上はほぼ使わないというか、要らないような感じがするものなのだが、そこでお医者さんに言われてしまうのが上記のセリフである。

 なんでも、急発進・急停車というのは良くないものらしく、仮に症状が治まっていて、一見するともう薬など全く必要のないように思えても、薬というのは徐々に減らしていかなければならないのだそうだ。そうしないとまた後で症状が、ぶり返しやすくなるのだと。

  「んな訳ないでしょ。こんなに綺麗に治っているんだから」

と高を括り、お医者さんはあんなこと言っているけど、治っているのにその上で薬を使うのは面倒なので、そのまま放っておこうと思って放っていると、しばらくはなんてこともないので、

「ほら、大丈夫じゃない。お医者さんは大袈裟なんだから」

と調子に乗るのだが、ところがである。またそれからしばらく日が経つと、綺麗に治ったはずの皮膚でまた、炎症がぶり返してくるのである。

 これはお医者さんの言う通りになった、いやあお医者さんというのはさすがだなと思いながらも、またすぐ病院に舞い戻るのはこれまた面倒なので、なんとか市販薬で粘ってみるのだが、そうは問屋が卸さない。また改めて病院に行かなければならないほどの症状まで、肌は見事に逆戻りしてしまう。

 

 「薬・・・徐々に減らしましたか?」

 「えっ? ええ・・・まあ・・・」

隠したってお医者さんには何でもお見通しである。それもそのはず、前回薬をもらってからまた来訪するまでの期間が短すぎるのだ。