刺青を彫る動機

 ガタイの良さや、当人がコワモテであるかどうかに関わらず、刺青が入っているという、ただそれだけの事実で、その人のことを怖いと感じてしまうようなところがある。

 また、怖いだけではなく、

「刺青を入れてしまうと、様々な不便があるだろうに(温泉やプールに入れないなど)、どういう動機があって入れることになったのだろうか」

という純粋な疑問を抱くこともある。

 おそらくそれは、相手を威嚇するためであるとか、いやそうではなく、ただ単純にカッコイイと思ったからであるとかいった理由なのだろうと、今まではただなんとなく漠然と思っていたのだが、

「あれ、もしかしてこういう動機の場合もあるのかもしれない」

とひとつ自分のなかで気づいたことがある。

 その動機は、

「刺青を入れさえすれば、他者に対する諸々の説明が不要になって、面倒が減るから」

というものだ。

 何故、こういった動機もあるのではないか、というところに思い至ったのかというと、別に刺青を入れたくなった訳ではないのだが(笑)、生きていると、ちょっと人と違うというだけで、これでもかというほど質問や詰問を受けることになり、最初は別に丁寧に答えているからそれで良いのだが、だんだんと説明するのが面倒になってきて、そういったときに、何か説明を省けるような、分かりやすいアイテムがあれば良いのになということをボンヤリと考えていたら、

「あれ?まさに刺青ってそういうアイテムとして有効じゃないの? ああ、そうか。刺青を入れる人達は、もしかしたら説明するのが面倒だから、普通の人とは違うんですよということを一発で説明するために刺青を入れていることもあるのかもしれないな・・・」

というところに考えが繋がったからなのだ。

 「ごめんなさい、悪いけど、私は普通のルート(各種学校を経て、すぐに企業へ就職する)には乗らないし、そもそも乗れないんです」

 ということを他者に説明する手間を省くために、刺青というアイテムはこれでもかというほど有効なのだ。もちろん、前述の通り、有効であるのだという話をしたまでで、自分自身で入れるつもりは無いのだが(笑)。