重ねれば重ねるほど

 どうしてこんなにも、私は誰かに何かを伝えたいのか。こう思っているんだということを表明したいのか。何の衝動でこんなにも、隠し立てすることを嫌うのか。言わなくても良いことを口に出すのか。

 確かなことは分からない。本当は分かっているのかもしれない。ただ、隠し事はやめようと、醜さを曝せば曝すほど、

「私はこう思っているんだ」

ということを表明すればするほど、逆に何か、隠し事を重ねていっているような気がしてならない。何かを書くということを続ければ続けるほど、ひとつの嘘が、厚みを増して膨らんでいっているような気がしてならない。

 私は嘘を書いているのだろうか。

「これが本当だ」

というような体を装うから、それが自ずから嘘になっていくのだろうか。書かれるものとは、所詮、本当のこととは質的に異なるということを自覚して、嘘を書き連ねれば、それは本当のことになっていくのだろうか。

 私は、何かを曝すことすら出来ないのかもしれない。