全く何も分からなくなる

 たまに、と言うよりは結構な頻度で、一切合切のことが、

「全く何も分からなく」

なる。

 それは、記憶喪失ということではない。ボケとも違う。ちゃんと、蓄えた知識、経験などの情報は把握したままで、その上で何も分からなくなるのだ。

 感覚としては、蓄えられた文字情報、経験などが、全て上滑りしているような感じである。

「私が蓄えたように感じていたのは全て勘違いで、本当は、一切のことが分かっていないのだ」

というところへ、前触れもなく急にストンと落とされ、私を取り囲む人達が、にわかに、本物の知識、経験を蓄えた人に見え出し、ひとり激しく不安になるというのがその状態の特徴だ。

 この感覚、状態は、ちょっとすればまたすぐに和らぐのだが、一度脱してもまた、比較的早いタイミングでこの状態へと連れ戻される。