いつから居るのか

 「歳を重ねるとねえ、身体にもガタが来ますし、何をやるにも面倒臭くなっていけません・・・」

あなたはまだ若いから良いねえ、まだ関係のない話だよとのことだったが、なんのなんの、大いに関係のある話だと思いながら聞いていた。それというのも、随分前から私の中にも老人が厳然として存在しているからなのだ。

 私が住まわせているのか、はたまた逆に住まわせてもらっているのか、彼と我とに区別は付くのか付かぬのか、確かなことは何ひとつ分からないが、彼はいつからだろうか、ずっとここに住んでいる。

 「あんた、いつから居るんだ?」

問いかけても、寂しそうに、しかしまた愉快そうに、フフッとした笑みをこちらに向けてくるだけだ。声すら出さない。

 私が今後も無事に歳を重ねていけるとして、いつの日か、すっかり年老いたとき、彼は私に変わって、にゅるっと表面に滲み出てくるのだろうか。いや、どうだろう。彼は老人ではあるが、歳というものを持っていないような気がする。表に出てくることはないんじゃなかろうか。