映像も一緒にセットされているのではないか

 全ての人がそうであるかは知らないが(純粋に文字列だけを追っている人もあるかもしれない)、

「本を読んでいると、文字列とともに映像が頭の中に浮かんでくる」

のは、わりかし普遍的なことかとも思う。

 それで、その、浮かんでくる映像があまりにも自身の脳味噌から来ているとは思えない光景を示していることが無いだろうか? 私は度々そういうことがある。

 この現象を無理にでも理屈づけてみれば、

『今まで見てきた様々の映像を、頭の中で細かい素材に分解し、本を読む際には、作者の文字列に従い、それに沿う景色を、一度分解した細かい素材を使ってランダムに拵え上げるから、必然的にいままで見たこともないような景色が頭の中に現れる』

というようなものになろうか。本当にこんなことが頭の中で行われているのだろうか。

「行われているのか」

という言は、『無意識だから』で書いたように、自身がまだまだ自身の無意識というものを侮っているが故に発せられているのかもしれない。だが、それよりも、

「本にはもともと映像が一緒にセットされているのでは」

という、一見妄想としか言えないようなものの方が、今の私の心情にはしっくりくる。

 作者が意図したかしていなかったかは分からないが、その人独自の文字列というものには、独自の映像をセットする効果があるのではないだろうか。そんな、あり得ない妄想を展開してみたくもなるが、やはり真相は、頭の中の組み合わせの妙というところへ近づいてくるだろうか。