知覚できない道

 距離にして200~300mくらいだろうか、バイト先と自宅とを往復するために使う30分ぐらいの道のりで、ちょうどそこだけ知覚できない通り、というか道がある。何と言ったら良いか、確かにそこを通っているはずなのだが、通った実感が、いつもまるでないのだ。

 最初は、歩いているうちに過集中が起きたり、反対に非常にぼんやりするタイミングが訪れる所為だと思ったから(確かにその状態自体は起こっているのだが)、その特定の場所だけ知覚できないというのは錯覚で、実際は、日によっていろいろなところに知覚できない箇所というのは変わっているのだと思っていた。

 が、そうではなかった。確かめるたび、毎度々々その200~300mぐらいだけが、いつも通ったように感じられないのだということが徐々に分かるようになってきた。

 それに気づけたので、今度は、他の通りはぼーっとしていても良いから、とにかくその知覚できない通りだけは、左に右に景色を確かめながら、一歩一歩をしっかり踏みしめて通るようにしてみたのだが、何故だかこういった努力を払っても知覚できないことにあまり変わりは無かった。

 その道だけたいした特徴が無いからだろうか。はたまたそこだけ非常に歩きやすいが為に、あまり歩いた感じを得られないのであろうか。その他にも、

「こうじゃないか、いや、こうじゃないか・・・」

という曖昧な理由だけは浮かんでくるのだが、肝心の、何故知覚できないのかということについては一向分からないでいる。