<29>「奥へ」

 散らしている、紛らしている。本当は、本当って何だろう。いや、とにかく、自由で、宙ぶらりんで、遊びで・・・。そういう事実(この際、事実といっても良いだろう)にしか関心がないんだ。けれど、そのことばかりを言っていたんじゃ迷惑するだろうと思うから、何か他の話も適当にしている(もっとも、それらも全く関連がない訳ではないのだが)。否、他者のためというより、主に自分の為に紛らしているのだろう。宙ぶらりんであるということはあまりにも強烈な事実であるから(これは、私だけに当て嵌まる事実であろうか、どうもそうは思えない)、それは気晴らしにはならないのだ。気晴らしっていうのがないと、本当に参っちまうと思うかい? そうだろうね、どうもそうだという気がするよ。ただ、息継ぎしないでいつまでも潜っていられたらどんなに最高だろうかと夢見ることはしょっちゅうだよ。気晴らしを必要としなくなったら、俺はどこに行くのだろう? その仮定は現実にならないから安心しろよ、という気持ちと、いますぐにでもその仮定は現実のものとなるだろうから、足腰に力を入れて準備をしておかなければならないという気持ちが入れ混ざっている。準備とは何だ、もう一度潜り直すことだ。