<58>「移動と涙」

 いちどきに霧散してしまえばいい。そうして良いものだけを纏って、この場所に・・・。しかし、それは動きを否定することだ。マイナスな方向、そんな方向があるのか知らん? 分からんが、動いて、動いて、動いていって、動きがなければいいか、苦労があるようにはどうも思えない。苦労って何だ? 話が自慢ばかりになる。爪の黒ずみ、頬のシワ、諦めたみたく、微笑。ピタッと触れて、涙、涙。苦労とはそういうことで、またそれは、良い動き。大抵それは自慢話の方へと傾く。それが本当でも、遂に聞いちゃあいられない。そうでしょう、姉さん? 私が広すぎる。どこにでも動く、そういうことに怖れを抱いていて・・・どうする? スイッチはない、自在。真ん中から怖れているのじゃなくて、移動、移動の残像、その片側に在る不思議。もう片方は? 消えた、あーたまた現れた。