<77>「誰が憶えた、」

 初めてのように振る舞わなければいけないという思いだけがあって、どうやら身体は初めてではないようなのだ(どこで経験したのだろう?)。蒸発し凍結し、上に在れば下に流れる、そういうことが一度目や二度目であることはまるで関係ないのと同じように、おそらく初めてであるとか何回も回数を重ねているというようなことからは遠く隔たった問題、動くとはそういうことなのだろう。むしろ、それらの動きの中に或る癖を見つけて、それを意図的に繰り返すように仕向けるところから回数、そのカウントが始まるのであって、あなたが心配しているほどに流れは停滞しないのかもしれない。であれば驚かなければいい。出来ることに対して驚くのは大事なことだとされているのかもしれない、まあしかし、それは後でいい。出来ている最中に、あるいは出来る兆しの見え始めているところに、驚きを登場させなくてもいい、出来るものは出来るのだ。