<96>「閉じるとき」

 きりきりと速度を増し、いよいよ高まる拒否の念をどうすることも出来ない。愚かさに耐えられないのだ。ふざけた、可愛さを持つ馬鹿げた話ならば楽しい、が、愚劣、勘弁のならないような話、意地の悪い喋り、意地の悪い探り、自分がそういうものから免れているとも思わないが、もう話したくない、しかし話したくない、特に愚劣さに耐えられなくなって口を噤んでそっぽを向いているとき、どうしてああも人は意地悪く敏感だろうか、こちらに話しかけないでくれ、しかし人がとても醜い話をしているときに限らず、歓迎してくれているときですら、温かい雰囲気のときですら、強烈にその門を閉ざしたくなる、これは何だ、自分のやっていることだが手に余る、愚かさに閉口して、と言ったが、それもきっかけのひとつであるだけかもしれない。きりきりきりと、凄まじい音を立てて閉まっていく、困ったことだ、悪いと一概には言えないかもしれないが、別に良いことだとも言えやしないだろう、きっかけもそうだ、多種多様なのだ、他者の反応、語りが原因でないことすらある、急に閉じてしまったとき、その後どういう顔をしていたら良いのかが分からない、他者が一番驚いているだろう、しかし私も毎度それなりに驚いていて、慣れない。