<136>「穴へ消える」

 今の現実を現実だと思わせない、あれは錯覚だったのだと思わせることでしか組み込むことが出来ない、これはまずいだろうと思うが、それは方法がまずいから方法さえ何とかすればという話ではなくて、そのまずさは根本条件であるから仕方がない。そうすると、大体は飲み込むことに拠る解決となるのだが、おかしいとハッキリ知覚しながら飲み込むこと、そうなっているんだから早くやれよと言われても、それが良くないことは(少なくも自分だけには)明らかだ。ならば脱落ということ、主だった関心事はそこにある。一般に脱落と思われている方向で脱落すると、すぐに見つかるというか、他人の意識に上りやすいので、その方向へ動き出す前よりもより大きく巻き込まれてしまう。忍ぶこと、まるで脱落とは程遠いと思われている位置でストーンと、真暗闇に消えてしまう。誰もが掴めていると信じている、いや距離が近すぎて掴むということすらまるで忘れているようなその中心で、穴にストンと落ちてしまう、その可能性をよく考える。