<203>「ひっこめて、うん、やっぱりひっこめて」

 例えば、金をかけずに揃えたいだけ本を揃えられたらいいな、と思う。しかし、その欲望を満たす可能性のあるような抽選が目の前に現れたとき、何故だか、

「参加しない方がいいな」

と思ってしまう(うっかり当たりでもしたら・・・)。別に、自分より困っている人が、などの変な意識が働く訳でもない。抽選というのは、現在の状況や調子といったものを完全にごちゃまぜにしてしまっているから良いのだし、そうすると、うっかり私が当たったとしても何もおかしいことはないのだと考えている。しかし、これは当たる訳がないと思いつつも、万一に引っかかったときのことを警戒して、引かない。これが、1000円とか5000円程度のカードであれば、せっせと応募する。特に何も考えない。それならばと、半ば冗談のような道楽で、本だけならば無限に買えてしまうようなカードを贈呈する(むろんあなたに受け取るつもりがあれば)と申し出た人がいる。すると私は何も考えずにしっかりとそれを頂くのだった。