<257>「また当たり前に会う」

 人がいなくなるという感覚が稀薄で、自然に反応は淡泊になる。ただ、淡泊であるからといって、何も感じていない訳ではなく、よく考えたり思い出したりはしていて、もうよほどのことがなければ会うことはないという事実を承知しているにしろ、こうやって何らかの関係が取り結ばれた人と、一方でしょっちゅう会っていた状態があって、一方で全く会わなくなる状態があって・・・と、そのどちらの状態もまた矛盾なく明日から再現されるような気がしていて、しかしそんなことは実際には起こり得ないということがとても不思議だったりする。多分、しばらく会っていなかった人に明日再会したとしても、反応の程は、

「おお」

ぐらいのものだろうと思う。それは、久し振りの再会に感動していないからではない。久し振りだとまず心底からは思えていないのだ。数年単位の間隔が空いていたら懐かしくて、数週間単位だとそうでもない、というようなこともあんまり感じられないのか・・・。また会うだろうと楽観的に考えているのか、しかし生きている人でも亡くなった人でも同じように心に浮かべる。会っていないこと即ち離れることだという感覚が稀薄なのだろうか。