<274>「なにもないところへまた」

 関係がある、というのは随分と奇妙な問題だ。関係があるのか果たしてないのかという戸惑いが、人を微妙に寄せつけない。それは分かっている。しかし、自信を持ってあなたと関係があるともまた言えないのだ。ない訳ではないのだろうが・・・。

 関係があると認めるための条件を非常に厳しく設定しているだけなのではないか。そうとも言えないような気がするのだ。身近な人であろうが、画面の向こうのスポーツ選手のような遠さの人であろうが、そこでは同じことが起きている。つまり、密接に繋がっていることを疑っていもしない瞬間がぷつっと途切れ、無関心の空白へと放り出されたような呆然とした瞬間のひとときが訪れる。そこに条件の厳しさ緩さというようなものはない。私はそういった時間が別に嫌いではない。何にもないところへ還ってきた変な安心感とでも呼ぶべきものがある。

 錯覚だとか嘘だとか、そんなことは言わないにしても、ひととき関係があると思える、あるいは常に関係があると思えるためのきっかけ、条件とは何か、その動きをする理由は。一員だと信じるとか、関係があると信じるとか言う。しかし、関係があると思えるか否かはそれを信じるか否かにかかっている、と言われても、どうにも納得出来ない。関係があるという気分に疑いを差し挟まなかったのは、何かを信じていたからではないのではないだろうか。スポーツ中継観戦の様を思い出しておいてみて・・・。