<282>「デラウェア」

 デラウェア。ひとつひとつ皮から実を押し出しては食べ押し出しては食べ、余った皮は皿の端にまとめて置いておく。実を全部食べ終えた後、余った皮を手の平の上でひとつの塊にすると、口の中へ放り込んで、ぎゅうっと絞る。果汁を絞り切ってカラカラになった皮の塊を口から出して、ご馳走様。

 そういった手順で、以前まで食していたことを思い出した。以前、それも、随分前だ(巨峰は種があるのであまり好きではない)。ふと、皮の塊を口の中でぎゅうっと絞らなくなっていたことに気づく。いつからだろうか。別に、気づいてから改めて実行に移しても遅いことはなかったのだが、恥ずかしさの為ではなかったと思うが、やらなかった。やったら美味しいのにな、とは思ったのだ。