<290>「情報と歩くゆうべ」

 表面的な変化に興味を見出せなくなる。すると、答えはどこかに退いた。道であることをやめ、空であることをやめ、そそくさと帰り、薄くなり、のっぺらぼうの地面をただひたすらに見せている。

 くだらない絡まれ方に戸惑い、しかし上がるテンションはもうひとつ下がらず、口も開けなくなるほどの疲労時にしか姿を見せない、その人は、ほとんど情報だと、情報だけだと言ってもいいのだ。戸惑いながら、くだらない返しをすると、何かが、いや全部がぴたっと止んだ。もう一度復活はしない停止であることを即座に悟り、逆に疲労がすーっと抜けていくように思えた。見慣れた風景が引き戻され、どちらに歩いていくのか、ためらうことがどうにも滑稽に思えた。