<307>「湿った踊り」

 そんなことはもういい。きっと解けないだろうということを考えて回るのだ。それこそ、日の昇らない先から・・・。私が見たものはそれだけではないか、いや、どれだけのものが積み重ねられていようと、あるのはぼんやりとした全体なので、そのことに疲れている暇もない。全く、暇がないとはどういうことだろうか。そんなはずはないだろう。夜毎行進してゆく馬車たちを仰ぎ見ながら、雨粒は染み込むほどの時間に計算を繰り返す。雨になる暇もなかったらどうすればいい? いっそのこと冷たく寝てしまおうか? 止した方がいい。大転倒の末に一杯の水が差し出され、潤いたい。皮肉な表情たちが床に置き去りにされ、湿った空間は練習用の踊りを踊った。