<309>「不透明な暗い夜」

 聞き慣れた歩道は既に褪せ、結び、不人気をいちどきに降って、暴走通りの対を成す。暗い夜よ、香り立つ、不透明な暗い夜よ。今は私も残されていない。やがて飽き、膨らんだいやらしさ、そっとしておいて、棒立ちの人間を素早く絡め取る。

 遅さはつまり、内緒のとどまり。しかし、どうだろう、そこは諦めた道だ。禁止の轟音が見解をひび割れさせ、無感動の物質を優しく抱く。ふらつきつつ、また、ふらつきつつ、大事そうに夕べをとくと眺める。あくまでも高い音を、触っているのは誰だ? それは残暑の休憩時間だ。実感を失った、大切でも大切でない道行き。