<329>「ひとつの出来ること」

 あくまで私に出来ることはひとつであり、それ以外にはない。選択肢を奪われた訳ではないし、増やすことを放棄した訳でもない。つまりひとつで全部である。不足はない。

 出来ることがいくつもあるように見える場合でも、それは表面的なことであり、根本的にひとつ以上のことはやっていない、またやる必要もない。どういうことか。ここには出来ないことはないという意味である。それは万能のスーパーマンであるという意味でなく、ここで、身体の枠内で、ひとつのこと(つまり全てのこと)を行う私の中では、何々が出来ないという話はないということである(その領域がない)。勿論、枠外で出来ないものにぶつかることはあるが、ここには出来ないというような領域はない。それは万能ということではなくて、ここにひとつ、出来ることがひとつあるだけだということなのだ。