<332>「拍子抜ける」

賭博なんかに手を出して・・・破滅するぞ、と言うその気持ちも分からないではないが、というより、そう言うしかない部分もあるのだが、破滅を目指すから賭けに身を投じるのであって、そこへ来て破滅するぞという警告があっても何の音にもなっていない可能性が高い。どうしようもなく壊したい、どうしようもなく破れたいというエネルギーに、破滅するという注意はいくらか拍子抜けなものとして現れる。故に、破滅しに行きたいのはどうしてなのかが問われなければならない。まあ、問うたところで、破滅したいという願いは割合に根が深いものであるからどうしようもないといえばどうしようもないのだが、どうしてそこまで破滅したいのかということを当人が考えて、それによって結局やめるようなところまでいければ、それに越したことはないのもまた事実だ。しかし、破滅したいという願望自体はなかなかに普遍的なものであっても、その強さには結構な差があるというか、実行に移すか移さないかというところに意外に高い壁が立っているから、先述した通りどうしようもないといえばどうしようもない。