<423>「転がれよ」

 鈍たくなるその頭の中に、透明な何かがカラカラと、音を立てたいような気持ちで居り、いつの間にやら動きが固定されていることを知る。脱出だろうか。ここで大切になるのは、脱出だろうか? これ以上は何も考える気が起こらないし、だいいちそんな人間ではあり得ません。オイオイ鈍たくなる前の運動はどこへ行った。停止なのか。ここで必要になるのは、停止なのだろうか?

 何もかもが、寒冷が、削りが、緩やかな調子が、鈍麻の全体に勢いをもたらし、またそれも鈍麻によって無化されはじめる。

 何かを考えていなければならないほど、状況は厳しいものになっているのだろうか。いや、考えたことがそのまま全部になるような、そんなやり方で歩みを止めたり続けたりしたのだろうか。常にそこには痕跡が先行した。

 さてこれが誰彼からなどと、構うことがあろうか。ただそこに、戸惑わずに繋げる。流露を妨げない成り行きがあって、それを歓迎するだけである。待ち合わせない、待ち合わせがない。人も、物も、景色も、休息も、確たるものも、全部を置き去りにして、当然、止まらないと知る方法で進む。