<455>「読み方」

 ザラ、ザラなぞっていけばいいものを、それが肝心であるところのものを、何故二番目に追いやってしまうのか。内容は、あるといいし、なくてもまあいいというもので、そちらの方が二番目なんだ。とにかくそこに動きがあってそれを感じるということがある。そしてそれがほとんど全てなのだ。

 目がすべっていっていると言う、しかしそれは内容を入れるだけの集中力が切れていたからなのか。試みに、ぐいっと集中して、注意深く辿り直してみる、と、すべっていったときに見たものとまるで同じものがそこに示されていることを知る(内容は入っていた・・・)。ああ、なんだ、すべっていくのにはすべっていくだけの理由があったんだ。それはタイミングかもしれないし、内容が把握出来ていないのではなく、もっと漠然としたものが、私にはまだ早いから、あるいはすれ違いようがないから、すべっていっているのだと(そう感じるのだと)思う。

 何を言っているのかが分からないのに、感じが分かるというのは大変なことなのではないか。私は何を見ていたのだろう。ともかく分かるのである。そして、

「ああなんだそういうことだったのか」

と気がつく「分かる」ではなく、ははあこりゃどうもどうも、という感じなのだからどうにも困った、いや、誰も困らない、私も困らない。