<461>「得体の知れないヒ」

 そんな経験などなかったのじゃないかといって驚いているようだが、経験は身体に任せておけば大丈夫だったようだ。徐々に何かを開いていくイメージでいるのかもしれないが、さあ、どうかな? こればっかりは分からない、というより、何かを開いていくために進んでいるのではないと思うのだ。ぐいと開かずに進むことは可能なのだろうか。

 得体の知れなさとして誕生し、得体の知れなさを育てるのは年月だ。奇妙な行動などではない。一体全体、何のためにこんなにも役割変更を繰り返してきたのだろうか。こちらを捉えているはずの眼球と、私の眼球とがぶつからないのも当然だ。僅かなズレだが、それでも明らかに別の場所を見ている。そのことに恐れをなす。視線自体が厳しいからではない。

 年月を重ね続けるというのは、一体何ということなのだろうか・・・。