<471>「地面につく」

 ひどくぼんやりしたがって、その場に釘づけにされているように見えるが、何かが去るのを待っていたり、また、何かに耐えているのでないことは分かる。鈍重な動きを申し渡されたように、その場で深く沈みこんでいる。尤も、それは不本意ではあるのだが、動作が殺がれる不可思議な空間を、ちょうどここで眺めていると、どうやら、ある別の瞬間には、この苦痛らしい苦痛も上手く思い浮かべることが出来なくなっているだろうことに気づき、それに苦笑を添えるべきか否かも分からない・・・。

 おかしな状態には当然ながらおかしな考えがあり、そんなものは取り払うべきであるのだが、いかんせん身体の動きが鈍い、というより、止まることとの親密度が増しているとでも言った方がいいだろうか。この場をいつまでもいつまでも動きたくないというメッセージは、錯乱した快感として、慎重に、はたまた不意をついて訪れてくる。