<476>「温度へ向かい回転する」

 普通の温度に、どれくらいの扱いにくさを感じてきたのだろう。明確に上がったり、下がったりすれば、態度の取り方のひとつやふたつ、私にも用意出来たのだけれど、といった顔が並ぶ通り。

 もう少し、売ってくれませんか? とんでもないこと、言うもんじゃないよと、視線が、こちら、あちら、そら、寄越せ、寄越せ、寄越せ・・・。

 正確に、同じリズムで、雑音のなかを行く。こうしていると、誰にも見えないことを知っているのだと、徒に話すこともない。道は、存在を準備されて僅かにその形状を変える。道理で、込み入ったなかをスルスルとすり抜けていける訳だ。

 呼吸を許すから、あなたも歩んだらいかが? こちらにだけ、ニヤッと笑うかと思えば、また少し遠くなる。場面を確かめたのはこの日のこの時間だけで、一体どこからどこまで混乱として処理したらいいのか。検討する気分でもない。

 同じやり方で歩み、明らかな妨害となるのではなく、ただニヤリと人知れず笑う道へ、誘いの表情へと変化することを考えてみる、考え続けてみる。むろん、回転するのは、そこで笑っているものだけとは限らない。