<544>「緊張した手の伸びる先」

 ひきずり過ぎるものその名を緊張と呼ぶ。これは誰に対してのこわばり、何に対してのためらい。ひとつの身体に戻ってくる水分また水分と、手を交わし状態変化状態変化その影響諸に。目出度くもこの足また足。呼び戻されてそこ、呼び戻されてまた。土産話のひとつやふたつが空中を飛び交い、空間はここへ集まり吐く息がここで。

 ス――っと始まるパッと終わる。おやおやこれだけ渡したのだから望むものから望まれるものへ、トコトコパタパタまだこれを夢にすると決めた訳じゃない。情け深さも決して出番を飛ばされた訳じゃないならまだここでのことをひとつ残らず見ていたらいいと思う。それはこの私だけの考えではない。ほら、両の手をだらり、そうだらり、出来るだけだらりとたらしたらほら、この場所が見えた。