<561>「歌の歌い方」

 あのおかしな歌を聴いて俺は・・・いや、あの人は普通に歌うことも出来たし、その歌を聴いたときは心地良さだったが、もう、半ば歌うのをやめたかに思えるぐらいの進み方で、こっちへこぼしあっちへこぼししていてそれは明日にも明後日にも続く不可解な響きとしてここに在った。それが残った。素朴な歌は別として、通常の歌は退屈に思えてきて何故歌がその通りに歌われなければならないのか、というようなことは考えたのか?

 規格を求めりゃそうなる。そんなものになんの魅力も感じていなくたってそれがあればそれが正解としか思われなくなるからそこを目指して歌う。あー、歌唱オーディションなんていやなことをやっていてみんな同じ歌い方みんな同じ腹からの声。逸れていかないものは逸れたままに・・・。