<593>「呆れた無限定の巣で、そこに住んでいる」

 一度や二度ではないって、大胆なことを言うではないか。大体が、放り出されたそばから瞳を柔軟に捉えて、べちょっとそのままになる。ひとっつも思い出と呼んで差支えないのだから。

「ちぇっ。本当のことを丁寧に説明すればいいと思ってやがる」

飴玉は苦みに溶かされた。全て風景とまた別になればいいと願っていた。

「手前さんのその奔放はね、それはね、拒否かい?」

「さあさあ、拒否が入っていないとは言わないよ。しかしそれで動く訳じゃあない。どうしたって私とあなたじゃ不成立じゃないかという、ただの感覚の、率直な表明なんだよ」

偉そうに。随分と細々いろいろのものを持っていて、それでいて分かんないんだか分かるだかのにんまりした時間を次々にぶち破っていってやるんだ。だってそうだろう。多分ここは、呆れた無限定の巣で、そこに住んでいる。力んだり落ち込んだりしないのなら気持ち悪いと言われて育ちゃあ、それでいいのさ。経験が回転をその奮闘作業のなかから救ってゆく。好都合で不満なのさ今日の水の音。