<612>「移る」

 あら、そんなとこに寝ていたの? 誰が頼むのでもないでしょうけど、動きの仕組みを、秘密を教えてほしいと言ったって、不可解なだるさや中止、停滞がバラバラと解けていくのを注意して見ていても、私には何も分からないでしょう。謙遜して言うのじゃないけど、繰り返して捕まるのは本意ではないのね。

 おっと。余計なものまで全部見せてくれると、それはそれで有難い。お前は休息だ。びっくりするが、お前この休みを利用して間から顔を覗かせてじっくり、じっくりと呼吸している。丁寧に運動を手伝うよ。子どもじゃないと言ったって、ピリピリピリピリするだろう。これを見せてよ、誰笑う訳でもないけどさ。おいまた疑問を増やしてさ。何が、どこがボロボロなんだって? 訊きにくいこともまた訊いて、移りたいだけまず移ってみて、混乱をふたつ用意した歌よ。

 分担を決めている顔じゃない。揺れて、揺れて、あれあなた、あれはあなたの顔じゃないの? これが否だって誰だってまともに景色を見てるのよ。ちょっとここで動かしてみて、

「え? どうしてその方法が分かるのです?」

わたしが何を動かしたのかあなたこそどうして知っているのでしょう。