<670>「塊は揉まれて」

 「それとこれとは関係がないのだから不思議だ」

という声がかかるなかで、私には分かる。受けたものは、すぐに返されるのではなく、身体のなかで不快を伴いつつ回転し、大変な熱になる。爆発しても消えない、大層厄介な熱に・・・。

 直接の対象はなくなった、誰も・・・不快を投げる人など誰もいなくなった、しかし、そんなことは関係がないのだ。

「なんだ、なんだなんだこれは・・・」

と、つぶやきながら、動き方より止まり方こそ忘れてしまった表情で、執拗に執拗に進んでいく。これは、例えば偉いというようなことでもなく、おそらく恨みというようなものでもなく、ぼやけた、大きい、解決不能の塊みたくなったものだ。

 これ以外のことが何も見えなくなるのでもなく、むしろよく景色は見えている。いや、私が震えなければならないのは、徒に湧き上がってこなければならないのは、何かの為ではないのだ。もはや、返す先がどこであるかは問題ではなく、返せるか否かも問題ではなく、人はなく、波もなく、変化もなく、静かに静かに静かに遠くの方で聞こえるもの・・・。

 きっと、何かを伝えているはずの動きがあるが、ふと見て、笑うでもなし、怒るでもなし、

「ん、どうだ、少し違う、もっと、もっと・・・」

と、別の何かが欲しい訳ではなく、同じ確認が欲しいの、だろうか・・・。