<708>「記号が吹く泡」

 上手く言えない必要があったから、激しくあちら、こちらでひっかかり、言葉ともども知らない時間のなかでとまった。時々感謝にもなり、曰く、

「上手く言わないでくれてありがとう!」

 進むのに大変な困難、伴って一息、呼吸と友達、訊ねながら忘れて、どうして答えなどが返ってきたのでしょうなどは無邪気。諦め方が時刻でよく似ていて、とてもとても苦笑いが新しい、勢いで若返ったような気がしていて、ひとりは空気、ひとりは眺めるだけと知る。適当にいれ、適当に滑り、話されていることどものなかで次々に泡を吹く、こりゃあ大変だ、実にテーマ、テーマという名前をギリギリまで引きつけて、見極める、冷静な態度であるにもかかわらず、暴走に近い。列車はうるさくなければならない、と小声で訴えかけ、両隣の人々はぎょっとする、というのも、べらぼうに声が小さいからであったが。

「もしよろしければもう少し近くへ寄りましょうか?」

などと、喋らずにいてくれて、と思っていた過去は消え、重要なことは特に素早く伝っていく訳ではないと分かると、記号の上で少し跳ねたりしてみせる。例えば、訳の分からないところへひとつ目安となる棒を通すと、確かになんとなくは事柄が伝わる。しかし、それはそこでめちゃくちゃさを失ってしまい、初めより何が何だか分からないってえことになる。それは私には困るのですよ、などと言ってみても、なんにも起こらなかったかのように周りの人は笑っているだけだ。どうした、元気もくそもないだろう、と、激しい。舌であれ、激しい。忘れていたことで行進が始まる、別段不思議な音ではない、ただ、荒れ方が分からないだけだった。